竹井詩織里「documentary」レビュー
竹井詩織里さんのミニアルバム「documentary」を、意外にもきちんと購入して聴いたので、レビューを書いてみたいと思います。割と厳しい評価をしている部分があるので、その部分はご了承の上でお読みください。
「グッバイハロー」
温かなアップテンポ曲。北海道をテーマにして歌詞を書かれたそうですが、確かに北海道の大地の温かさというか、少し本州とは違う気候と独特の雰囲気が漂っています。少し違う地で久しぶりに過去の自分を見つめ返し、一歩成長したことを「グッバイハロー」と表現するところは彼女の作詞センスのよさが出ています。難を言うとしたら、アレンジがもう少し生楽器だったらもっとよかったかもしれませんね。
「song for you」
ダークバラード曲。彼女の感情の振れ幅からすると、もっとも苦難・悲しみに傾いた作品だと思うのですが、残念なことに、メロディーが平坦でそもそも積極的に聴こうという気が起こりません。あともう少し起承転結がはっきりしていればよい曲になりそうなだけにもったいないですね。
「at eighteen」
18歳の頃のデビュー頃の心境をつづったダークアップテンポ曲。少年・少女期から大人へ向かう途中での葛藤・苦悩・やるせない気持ち。それらと共に、自分の元から去らざるを得なかった恋人への後悔を赤裸々に描いた歌詞は絶品です。後藤さんらしい流麗なメロディーとともに絡み合うことでそのよさを更に高みに上げています。アルバムの中でもっともお勧めな作品。
「セツナの光景」
やわらかなミディアムテンポ曲。時々出てくるですます調や、「セツナ」という言葉にこもっている、ともすれば冷徹にも思える一瞬一瞬の出来事を、あくまでも温かい目で捉えた視点の歌詞はAZUKIさんからの影響を感じるものの、あくまでも竹井さんならではの作品に仕上がっていると思います。彼女の歌詞センスのよさが出てますね。
「ノーサイド」
松任谷由実さんのカバー曲。原曲は知らないものの、メロディーと歌詞はニューミュージックの開拓者である松任谷由実さんらしいですね。こちらのバージョンはヴォサノバ調のアレンジで、竹井さんはそつなく歌っているという印象があります。しかし、原曲からアレンジを変えてまでカバーするにはもう少しアレンジに工夫を凝らすか、いっそのことより原曲のイメージに寄り添って1から作り直した方がよかったのではないでしょうか。何となく原曲を知らなくても、原曲に対する尊敬の念、カバー曲を入れる意義というのがあまり感じられませんでした。
全体としては、正直なぜ彼女がこの作品を作ったのか分からず、何もかもが中途半端でミニアルバムとするには難があり、あまりよくないと感じた作品でした。
なぜそう感じたのかというと、前作のアルバム「Diary」は制約が多くてなかなか作れなかった部分、率直な今の自分の気持ちを表現した作品で、イージーリスニングに聴ける作品というコンセプト自体が、私が求める竹井さんの作品として望んでいないのですね。確かにそのコンセプト自体が悪いとは思いませんし、そこから生まれた作品としては今作は「アリ」だと思います。しかし、私が彼女を1アーティストとして望んでいる部分は、今持っているよさの安寧ではなく、もっとより貪欲に1人のアーティストとして探究心を持ち、歌手としての高みへと上って欲しいのです。それはとても大変で、苦しい道ではありますが、彼女が今まで作ってきた作品を鑑みるに、今ある才能をより伸ばし、彼女にしか出来ないただ1つの作品を作っていける、それだけの潜在的な可能性を持つアーティストだと思うのです。
そして、この程度の作品を作るにしても、もう少し気持ちをまとめてから、1つのアルバムとして作品を出した方がより洗練されたアルバムに仕上がったかもしれないという可能性が残っているのですね。そのあともう少しの部分に甘さが残っていて、今出す作品としてはやや消化しきれていない印象を抱きました。
最後に、「Diary」でせっかく生楽器を多用してアルバムを作ったのにも関わらず、また打ち込み主体のアレンジに戻ってしまい、そのアレンジが甘い出来なのがとても、もったいないです。「グッバイハロー」、「at eighteen」、「セツナの光景」をもし別の人が生楽器を上手に使ってアレンジしていれば、それだけでも、もっとよい作品に仕上がったと思うのです。
なかなか厳しいコメントをしてしまいましたけれども、それだけ竹井さんに対する思い入れは強いということで、今回のレビューは簡単ながら幕を引きたいと思います。


comments
ここまで丁寧なレビューに頭が下がります。
個人的には「セツナの光景」が好きです。
初めて聴いたときは、何度も聴けるだろうかと不安に思ったのですが、実際は何度も聴いています。
ただ、自分が竹井詩織里さんのファンだから何度も聴けて、そして、のめり込めたのであって、そうでない人に対してはあまり心に残らない作品になってしまっているのではと思っています。
お久しぶりです。
竹井さんは思いいれも強い分、今回はちょっと辛口にレビューしてしまいました(笑)
私は「at eighteen」はヘビーローテーションするくらい聴いてましたよ(笑)
まぁ、このミニアルバムはもともとコアなファンに向けて作ったアルバムのように感じますし、来年出るベストで、どれだけ新しいファンが出て来るかが課題だと思いますね。